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V『御坂美琴(レールガ ン) vs 学園第二位 の男(ダークマター)



「これっぽっちもときめかない愛の告白ね」

 美琴は意識して笑うことで自身の緊張を和らげようと試み、それに成功した。
少なくとも、驚きや恐れといった感情に起因する硬さは消えている。

 同時に美琴は垣根提督とやり合う覚悟を決めていた。
正確には、そうせざるを得ないと言ったところか。
 まず、電撃使い(エレクトロマスター)の 彼女には高速で移動する術はなく、
まったく噂を聞かなくなっていた間に不思議の国にでも迷い込んだのか、
翼を生やしたこの男から逃れるのは至難の業である。
加えて大人しく従うつもりなど毛頭ないため、ほぼ確実に戦うことは避けられない。

 もっとも、何の準備もなく闇雲に逃げて簡単にまくことができるような者が、
一方通行(アクセラレータ)に 次ぐ学園都市第二位の座に着けるはずがなかった。
従って、少女に取れる手はせいぜいそうと知られないように態勢を整えることくらいである。

 ただ、これに関してはあからさまに戦闘の準備を始めでもしない限りは上手く行くはずだった。
相手は間違いなく自分が各上と思っているし、
実際、実力は未元物質(ダークマター)の 男が勝っているだろう。

 だからこそ、彼が不意打ちを仕掛けてくる可能性は極めて低いとみていい。
そうでなければ馬鹿正直に正面から現れて「俺の女にする」などとは口にしない。

 案の定、学園第二位は超電磁砲の少女の軽口を無視したりはせず、応じてきた。

「そうか。俺としては最上級の口説き文句だったんだがな」
「悪いけどさっきの台詞はボーダーにかすりもしない赤点よ。
言っとくけど、追試は受けつけないからそこんとこよろしく」

 美琴はベンチに座ったままいつでも動き出せるよう足の指先にまで神経を張り巡らせつつ、
表向きは余裕の態度で大きく肩をすくめてみせる。

「そもそも、常盤台のお嬢様に馴れ馴れしく声をかけること自体、
控えるべきだと思わないのかしら垣根提督」
「その台詞、そっくりそのまま返すぜ御坂美琴。
テメェは誰に向かってそんな口を聞いているんだ、ってな」

 男は少女の反応を楽しんでいるようだった。
並みの能力者であれば最初から怯えてしまって会話にすらならないのだ。
さすがは超能力者(レベル5)、 と言ったところか。

 しかし、無謀であることには変わりない。
第二位と第三位の実力差は天と地ほどに開いているのだから。

「一応確認しておくが、とどのつまり、
素直に言うことを聞いておこうなんて気はさらさらないんだな」
「当たり前でしょ」

 美琴はわずかに白い歯すら覗かせて、力強い笑みをみせた。
これまで未元物質と手合わせをしたことはないものの、
圧倒的な力を持つ相手ということはわかっている。
それでも、彼女は萎縮していなかった。
その確固たる自己、パーソナルアイデンティティーはあらゆる事象を前にしても揺らがない。
何しろ、一度は死を覚悟して一方通行に立ち向かったことすらあるのだ。
一切の攻撃を無効化されるわけではない以上、必ずやりようはある。

 否、やってみせる。
少女は強い決意と共に、はっきりと宣戦布告する。

「アンタなんかの女になるくらいだったら、私は舌を噛んで死んでやるわ」
「ハッ、吹くじゃねえか第二位。鼻柱の強い女は嫌いじゃねえ」

 垣根は楽しくて仕方がないといった表情で肩を震わせた。
ただの強がりではなく、勝算が極めて小さいことを知りながら、なおも立ち向かおうと言うのだ。
本気でモノにしたくなる女ぶりではないか。

「くっく、面白い。俺が何者かを理解した上で尻尾を巻いて逃げようとしない
学園第二位と第三位の差がどれほどのものか、身を持って知るんだな」
「そう? そんなの、やってみなくちゃわからないわ」
 美琴はさらりと(うそぶ)くと、
スカートのベルト留めに吊るしてあったストラップから細長いケースを抜き取った。
まるで特殊部隊のナイフのように取り出されたのは、
長さ一〇センチ程度のプラスチックでできた拳銃のマガジンに似た形状をしている。
入っているのはゲームセンターのコインで、すなわちこれは一種のコインホルダーだ。

 美琴は手の中にあるケースを意識しながら、

(見せてやろうじゃない……ッ!!)

 ゆっくりと立ち上がった。
彼女は電磁力を応用し、ゲームセンターのコインを音速の三倍で射出できる。
この距離ならば瞬きをする間もなく男の体に到達し、
直撃すれば戦闘不能に陥ることは疑うべくもない。
「これが私 の超電磁砲(レールガン)よ!」

 美琴の前髪が火花を散らせ、超音速の一撃が垣根提督を貫いたかに見えた。
だが、驚異的な勘の良さで頬をかすめるだけにとどまり、
コインは轟音を伴って背後の大気を震わせ虚空へと消える。

 その間に美琴は数メートルの距離を取って男と対峙した。

「なるほど、超電磁砲の二つ名は伊達じゃないってか」

 垣根は感心を表すためにヒュウと口笛をひとつ吹いて、
薄っすらと血がにじんでいる頬の傷をそっと一撫でする。

「あまりに舐めた口ぶりだったから少々心配だったが、
どうやら俺の力を過小評価しているわけではないようだな」
「当たり前でしょ。上位の相手に出し惜しみをしてどうすんのよ」

 コインホルダーから取り出した次の一枚を握りしめながら、美琴は我知らず下唇を噛んだ。
どれほど威力のある攻撃であっても、当たらなければ効果はない。
有効打を叩き込むためにはあらゆる手段を講じなければなるまい。

 だが、そうした考えは次の台詞を聞いた途端に、少女の中から霧散した。
「テメェといい、 あの空間移動(テレポート)の 女といい、やたらと戦い慣れてやがる」

 続く「大したもんだよ御坂美琴」という台詞は、美琴の耳に届いていなかった。

「アンタ、黒子をどうしたのよ」

 少女は瞳に怒りの炎を灯しながら、ぎり、と奥歯を噛み締める。
垣根提督がこの場にいるのだ、答えは聞かずともわかっている。
それでも日々の生活を共にするパートナーの安否をたずねずにはいられなかった。

「ああ、あの女ね。白井黒子ならその辺りで野垂れているはずだ。止めは刺し損ねたがな」

 男は小さく肩をすくめてから、手のひらに残る感触を反芻しつつ下卑た笑みを口元に浮かべる。

 美琴はブチリと何かが千切れるような音を聞いた。
それが自分の歯が唇を噛んだ音だと気づくのに、数秒もの時間を必要とした。
垣根がみせる生理的に嫌悪感を覚える種類の表情すら気にならない、
目もくらむような怒りがふつふつと沸き上がってくる。

「たった今、アンタと戦う明確な理由が出来たわ」
「そりゃ結構。やる気のないヤツとやり合っても面白くないからな」

 これは垣根にとって紛れもない本心だった。
一方的な戦闘ほどつまらないものはない。
敗れはしたが、一方通行とやり合った時はかつてない高揚感と経験を彼にもたらした。
失ったものもあったが、得たものの方が多かったのではないだろうか。

(さて、テメェはどうだ。糧になるだけの器かどうか)

 男は心中独りごちると、まっすぐに少女を見据えた。

「じゃあ、始めるとするか」

 美琴はわずかに顎を引いてそれに応じる。

「望むところよ」

 この言葉を合図に、戦いの火蓋が切って落とされた。

 六枚の翼が空気を叩き、 凄まじい速度で未元物質(ダークマター)が 突っ込んできた。
美琴は地を蹴りながら電灯の支柱に磁力を伸ばすことで速度を倍化させ、かろうじて回避する。

 垣根提督は大量の砂を巻き上げながらベンチを吹き飛ばし、
ブロック塀を粉砕した上数本の木々を薙ぎ倒したところでようやく動きを止めた。
この低空を駆ける破壊の行進によって、
砕け散ったコンクリートの破片を始めとする様々な構成物が無数に宙を舞って頭上に降り注ぐ。

 直後、学園第三位の少女の前髪がバチッと光を放った。
彼女の足元にあった砂が不意に隆起する。
正確にはそこに含まれていた砂鉄が磁気を帯びて硬化し、
生み出された漆黒の剣は鞭を思わせるしなやかな動きで空中を踊り、
落下してくる瓦礫を一つ残らず吹き飛ばす。

 垣根はこちらを振り向くや再び翼をはためかせて滑空に移った。

「今度はこっちの番よ!」

 瞬時に彼我の距離は詰まるが美琴は冷静に迎え撃つ。
少女の前髪から火花が散って、一〇億ボルトの雷撃が一直線に男へと伸びた。
間を置かずズバンという轟音が炸裂し、
衝撃を殺しきれず垣根は激しく地面の上を転がっていく。

 だが、白煙をたなびかせながら立ち上がった男の羽には焦げ目すらついていなかった。

「ハッ、大した威力だがこの程度は痛くもかゆくもねえ」

 六枚の翼を使って全身を繭のように包み込むことで本体へのダメージを防いだのである。
そして、大地に横たわったまま垣根は言ってきた。

「ところでな、飛び道具はテメェの専売特許じゃないぞ」
「!!」

 背筋が凍るような危機を感じて、美琴は磁力を応用し一足飛びに数メートル移動した。
直後、男と彼女が元居た位置を結ぶライン上の地面に、
紙片にカッターナイフの刃を押し当てて滑らせたようにぱっくりと割れ目が生じる。

「なっ……」

 少女は絶句した。
あと少し動くのが遅れていれば、まっぷたつにされていたかもしれないのだ。

(とんでもない威力ね)

 油断なく身構えながら、美琴は砂地に刻み込まれた跡をもう一度横目で確認した。
おそらくかまいたちに切りつけられた傷とはこのようなものなのだろう。
確か、切りつける対象を転ばせる役、切りつける役、そして薬を塗って血止めをする役、
これら三体が同時に行動するらしい、とそんな知識が頭をよぎる。

 視覚的イメージは垣根の翼から黒い光のようなものが発されたかと思うと、 地面が割れていた。
試したいとは思わないが、見てから避けていたのでは間に合うまい。

「随分と精度が上がってきたな」

 男はゆらりと立ち上がるとズボンを軽く叩いてニヤリと笑った。
「撃ち出したの は未元物質(ダークマター)、 この世に存在しない物質だよ。
未来永劫見つかることはなく、理論上も存在し得ない。ないものは見つけられないからだ」
「羽を生やしただけじゃ飽き足らずこんな技まで身につけた、ってことね」
「ああ。誰かさんのおかげで日々自己研鑽するようになったんでな」

 美琴は見た目にはほとんどわからない程度、眉を寄せた。
消息を絶っていた数ヶ月間と関係があるのかもしれない。
しかし今はそれ以上に差し迫った危機が目前にあった。

(ちょろっと……ううん、相当分が悪いわね)

 電気が持つ特性を考えれば当然かもしれないが、
彼女はインファイトよりも一定の距離を置いて戦う方が得意だ。
ここで問題となってくるのが使用する武器である。
たとえば狙撃手同士であれば運の要素が加わるにしても、
多くは腕の差が勝敗につながるだろう。

 では、武器自体の射程範囲と命中精度に大きな開きがあった場合はどうか。
同じ条件で戦う限り、より有用性の高い飛び道具を持っている方が有利なのは自明の理である。

「だが、ちんたら戦うのは俺の趣味じゃない」

 垣根が広げた両手を天に向けながらのんびりと言ったその時、
研ぎ澄まされた美琴の感覚に触れるものがあった。
そして少女がためらうことなく移動した直後、たった今まで立っていた場所を漆黒の閃光が貫く。

「ほう。やるな」

 男は素直な感想を口にした。八分以上、この一撃で勝負は決すると思っていたのだ。
しかし、実際には彼女の体をかすめもしなかった。
垣根と正面きって戦うことを避けていた第四位の麦野沈利とは大違いである。
「いいぞ御坂美琴。それでこ そ超能力者(レベル5)だ」

 もっとも、少女は敵の賞賛に笑顔で応えるだけの余裕はなかった。
直感による回避がいつまでも成功し続けるとは思えないからだ。

「こんなチンケな技で倒すのは失礼ってもんだぜ」

 垣根が今日初めて腰を落とし、構えを取ったことに美琴は戦慄した。
対峙するだけでもこれだけのプレッシャーを放つのだから、やはり只者ではない。

「だが、俺の全力を受けられるかな」

 男は不敵に笑い、少女は唇を真一文字に引き結ぶ。
だが六枚の翼が空気を叩いた途端、マグネシウムに火をつけたような強い輝きが生じて、

「?!」

 美琴は垣根の姿を見失った。あ、と思った時には空の青が視界に広がっていた。



「目に頼りすぎだ、御坂美琴」

 垣根は少女の四肢を翼で大地に押さえつけてからおもむろに馬乗りになった。
美琴は即座に電撃を放とうとするが、それより早く残る二枚の翼が首と頭部に突きつけられる。

「くっ……」
「いいんだぜ、どちらが早いか試してみても」

 舐めるような視線を受けて、うら若き乙女の頬は羞恥の色に染まった。
唾でも吐きかけてやろうか、とはらわたが煮えくり返るような思いを覚えながらも、
ぎりぎりのところで冷静さがどうにか怒りの衝動を抑えつける。

「さて、まずは胸の膨らみをじっくりと堪能させてもらおうか」

 サマーセーターの上からなだらかな乙女の双丘に触れて、垣根ははたと動きを止めた。

「それともキスがいいか? いや、待てよ。舌を噛み切られそうだな」

 顔を近づけて覗き込んでくる男の顔に、雷撃を叩き込めればどれほど気持ちがいいだろう。

(最悪……! こんなヤツに触られるなんて……!!)

 憤怒の炎を燃やしながら、しかし美琴は歯を食いしばって耐えた。
力任せに暴れても勝てるはずがない。わかってはいる。いるのだが……。

「ああ、いつでもあがいていいぞ第三位。やれるもんならな」

 明らかな挑発だった。
この男は、身動きの取れない彼女をいたぶろうというのだ。

 プツン、と何かが切れる音を少女は聞いたような気がした。
次の瞬間には、叫び声が口をついて飛び出していた。

「ちっくしょう! 冗談じゃないわよ!」

 美琴は顔を真っ赤にするほど力を入れて両手を動かそうとするが、
がっちりと固定されていて動かずことができない。
超電磁砲に使うコインホルダーも、押し倒された衝撃で少し離れた所へ転がっている。

「上等じゃない」

 両手は白い翼に押さえつけられて動かない。
超電磁砲に必要なコインホルダーも離れた所に落ちている。
それでも、学園都市の名門・常盤台中学のエースは屈しない。
一つ二つの切り札を封じられた程度で手札が切れる彼女ではないのだ。

 ぶわっという音が炸裂した。
それは美琴の周囲にある、白い砂浜から大量の砂鉄 が(うごめ)く音だった。

 黒い粉末の塊は彼女を中心に半径五メートル前後噴き上がったかと思うと、
美琴の意思を受けて腰の上にまたがっている垣根提督へ全方位から襲い掛かる。
その表面をコーティングするように、三六〇度ぐるりと隙間なく埋めつくしてしまう。

(超電磁砲のコインが手元にないってんなら……)

 美琴は笑う。
その前髪から、高圧電流の存在を示す青白い火花が散る。

(アンタ自身が、この私の砲弾になりなさい!!)

 ドバッという轟音が炸裂した。
美琴に覆いかぶさっていた垣根は、砂鉄に包まれたまま高く大空へと射出される。

「そして! 飛びきりの一発をお見舞いしてあげる!」

 少女の前髪が激しい火花を散らし、にわかに生じた雲が超弩級の雷を放った。

 はるか上空で垣根提督を包み込んでいた鉄の塊は、
ダンプに跳ねられたスイカのように砕け散った。




To be continued...

ver.1.00 09/05/13
ver.1.65 09/05/14
ver.1.82 09/05/15

〜とある乙女の処女喪失 V・舞台裏〜

「!」

 金の刺繍が施された純白の修道服に身を包む銀髪碧眼の少女は、
きょろきょろと周囲を見回しながら通りを歩いていたが、
人ごみの向こうに見知った黒髪の少年を発見してぱっと笑顔を閃かせた。

「とうまー!」

 主人の姿を見つけた途端、全身で喜びを表現しながらすり寄ってくる子犬のように、
インデックスは上条に向かって大きく手を振って呼びかける。
幻想殺しの少年はすぐにまっしろなシスターの存在に気づき腕を持ち上げて応えた。

 程なく二人は合流を果たして、

「ねえとうま」

 それまでにこにことしていたインデックスは上条の名を口にした直後、
不意にカッと健康そのものの白い歯を剥き出しにする。
黒髪の少年は緩ませかけていた頬を引きつらせて一歩後ずさりした。

「おう、どうしたんだよインデックス……って、
何ゆえあなた様は歯をガシガシしてらっしゃるのでせうか」

 そのさまはさながら蛇に睨まれた蛙と言ったところか。
主に彼の頭部をこれまで幾度となく襲った痛みがそうさせるのだろう。
純白シスターは何度かトラバサミのような顎を数度開閉させてから、
うー、とうなって小さく唇を尖らせた。

「とうま!」
「ひっ、な、なんでしょうか、姫」

 上条はすっかり怯えた目でインデックスに絶対恭順の姿勢を示す。
今、下手に彼女を刺激すればその咀嚼力がいかに強靭であるか、
身を持って知らされる羽目になるからだ。

「なんでしょうか、じゃないんだよとうま。
冷蔵庫の中身が空っぽで、私は空腹のあまり危うく天に召されるところだったんだから!」
「悪ぃ、それは済まなかった……って、あれ?」

 黒髪の少年は反射的に頭を下げてから、ふと違和感を覚えた。
何故彼女は即座に噛み付いてこなかったのだろうか。
そもそも、冷蔵庫には一人分の昼食がきっちりと用意されていたはずで、
部屋を出る前にも確認したため記憶違いということは考えにくい。

「なあ、インデックス。俺の勘違いなら謝るけど、
昼飯はちゃんと用意してあったんじゃなかったか?」
「そ、それは……うん、入っていたかも」

 完全記憶能力を持つ純白のシスターは一瞥した記事の内容でさえ思い出すことができる。
さらには嘘をつくことへの後ろめたさもあったのか、
とっさに言い訳を用意できなかったインデックスは微妙に目をそらしつつうなずいた。

 彼女の態度に、はて、と上条は首を傾げる。

「えーと、つまり?」
「朝ごはんが足りなかったから、つい」

 修道服に身を包んだ少女は上目遣いになって、ごかまし笑いを浮かべた。
つまり、言いがかりだったのだろうか。まさかの成り行きに思わず絶句する上条を見て、
インデックスはさすがに気まずさを覚えたかフォローの言葉を口にする。
「えー、こほん。私、インデックスは敬虔なる神 の(しもべ)です」
「ふむ。それで?」
「だから、慈悲の心で飢えの苦しみにもがく子羊をお救い頂きたいのです」

 目を閉じて立てた手のひらを顔の高さに掲げながら言う姿は、
端からすれば説法をしているように見えなくもない。
瞼がぴくぴくと震えているのはご愛嬌、と言ったところか。

(たく、素直じゃねえな)

 黒髪の少年は後ろ頭をぽりぽりとかきつつ苦笑して、
ぽん、とインデックスの頭に手を置いた。

「だったら最初からそう言えばいいじゃねえか」
「だって。とうま、すぐに見つからなかったんだもん」

 頬を膨らませながらも、禁書目録の少女は甘えるように上条の袖をつかみ、
すん、と小さく鼻を鳴らす。

 と、彼らがそんなやり取りを交わす背後を二人の少女が通り過ぎた。

「むむむ、あちらから何やらSOSめいた電波を感じるかも、
ってミサカはミサカはずば抜けた感知能力を披露してみる!」
「ちょっと、いきなり走り出さないでくださいってばアホ毛ちゃん」

 白の水玉がちりばめられた空色ワンピースの上から
明らかに身の丈が合っていない男物の白衣を引っ掛けた小柄な少女の後ろを、
頭部に花瓶を乗せているように見え る風紀委員(ジャッジメント)の 腕章をつけた黒髪の女学生が追いかけていく。

 上条とインデックスはそのことに気づかず、
当然ながら打ち止め(ラストオーダー)が 言う『SOSめいた電波』の正体について知る由もなかった。



 少し間隔が空いてしまいましたが、続きです。
勝負と美琴の貞操の行方は、どうぞ次のお話をお待ちください。
続きは今月中にアップしたいと思います。

 それでは、再び皆さまとお会いできることを祈りながら。

次回予告
 学園都市第二位と第三位の間には絶望的なまでの開きがあった。
必死の抵抗も空しく、美琴は覚醒した垣根の圧倒的なパワーに蹂躙される。
そして、男は宣言どおり穢れなき乙女を我が物にせんとその身に手をかけて…?
W「少女無残(仮)」に、乞うご期待です。



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