ステキ絵師 鈴木志亜さんとの合作です。
ことの発端は志亜さんが日記にあげたイラスト↓


 話が盛り上がり、「ユフィがルル子をたずねたら」どうよ、と書いてみたのが下記のものです。
嬉しいことにキュートな挿絵を新規に3点も描いてくださったので、 合作という形でアップさせていただきます。
では、どうぞお楽しみくださいませ。



 アッシュフォード学園にとある書状が秘密裏に届けられた土曜日の昼下がり、
金髪の生徒会長は車椅子に乗ったアッシュブロンドの少女を訪れていた。

 用向きは書簡の内容に関する相談で、相手にナナリーを選んだのは、
生徒会メンバーの中でもっともふさわしいであろう人をその場の思いつきで決めたまでのことだ。
あるいは、無意識ながらも皇族の出であるランペルージ兄妹ならば、
ユーフェミアと面識があると勘付いていたのかもしれない。

 いずれにせよ、結果としてミレイの取った行動は最善のものだったと言えよう。
何しろ、盲目の少女は手紙の送り主についてよく知る数少ない人物だったからである。

「ごめん、ちょっと相談したいことがあって」
「はい、私でよければ」

 幸いと言うべきか咲世子とルルーシュの姿はなく、
気のいいアッシュブロンドの少女は笑顔で突然の訪問者を受け入れた。

「どうかされましたか?」

 あわてているようですけれど、と小さく首を傾けるナナリーに、
ミレイは一瞬どう答えるべきかを逡巡し、言葉を選ぶのを止めて単刀直入に言う。

「実は、ユーフェミアさまからアッシュフォードへ遊びに来たいと連絡があったの」
「え……ユフィ姉、ユーフェミアさまが?」

 まさか姉の名前を耳にすることになると思っていなかった車椅子の少女は、
驚きのために危うく愛称を口にしかけて、すぐに言い直した。

 それを見た金髪の生徒会長は、
ナナリーが唐突な副総督来校の知らせを聞かされてみせた反応だと考え、
ほほえましそうに首肯する。

「ナナリーは、ユーフェミアさまのことは好き?」

 ミレイの質問を、ナナリーは額面通りに受け取った。

「はい、もちろんです」

 車椅子の少女にとって、ユーフェミアは姉であり、友であり、ライバルでもあった。
まだ目が見えた頃、一緒に遊んだ時のことは今でもよく覚えている。
どちらをお嫁さんに迎えてもらうかを巡って、二人でルルーシュに詰め寄ったこともあった。
今もなお光彩を放つ、温かな思い出の一つである。

「どうも公式な訪問ではないらしくって、
知らせるのはなるべく少ない人数で済ませたい、とのことなのよ。
それで、誰に相手をしてもらえばいいかと思ってここに来たというワケ」
「なるほど、そうでしたか」

 車椅子の少女は小さくうなずいて、そっと首を傾ぐ。
つい先日学園祭で顔を合わせたばかりとはいえ、
できることならユーフェミアと会って話がしたかった。
彼女も、そうしたいと少しは考えてくれているだろうか。

(また、ユフィ姉さまとお話ができる)

 第三皇女という立場上、ただ遊びに来るだけということはないだろうが、
それでもナナリーは頬が緩むのを止められない。

「私でよければ、ぜひお願いしたいです」

 言ってから、アッシュブロンドの少女は兄の姿を心に描いた。
あの日二人は話ができなかったはずで、だとすればこれはいい機会ではないか。
きっと、双方とも喜ぶに違いない。

 ナナリーは、わずかに口元を緩めた。

「あとは、お兄さまも加えていただければ」
「そうね。ルルーシュなら相手が皇女さまでも卒なくこなすだろうし」

 金髪の生徒会長はあっさりと首を縦に振る。
いくら少人数といっても目の見えないナナリーだけにすべてを任せる訳にはいかない以上、
せめてあと一人は加えるべきであり、それが兄のルルーシュであれば言うことはなかった。
ひとまずは安心、といったところだ。

(さて、と)

 ミレイは内心つぶやくと、口の端を持ち上げた。
面白いもので、悩みの種が消えるとにわかにお祭り好きの血が騒ぎ出してくる。
おそらく、この性分は一生消えないのだろう。


「ねえ、ナナリー。せっかくお迎えするんだから、ちょっとした遊び心は欲しいところよね。
これがコーネリアさまだったら畏れ多くてとてもできないけれど、
ユーフェミアさまなら大抵のことは笑って許してもらえそうじゃない?」
「はい、私もそう思います」

 アッシュブロンドの少女は即座に同意した。さすがは生徒会長と言ったところか。
言葉を交わしたこともない第三皇女の人柄を、よくつかんでいる。
ユーフェミアは、よほどのことでもない限り受け入れるはずだ。

 ナナリーにとっても、ユーフェミアに少しでも楽しんでもらえた方が嬉しいに決まっている。
考えるべきは、その内容だった。

「失礼のないようにはしなくちゃいけないわね。うーん、何がいいかしら」

 ミレイが緩く腕を組んで、小さく唇をとがらせる。
大っぴらにはできないため、どうしても使える場所とできることが限られてしまう。
また、礼儀は守る必要があるもののあまりしゃちほこばったものにする訳にはいかななかった。
それならば、何も特別なことをしない方がマシである。

「そうですね……」

 ナナリーがゆっくりと相槌を打った次の瞬間、ある考えが頭に浮かんだ。

「こういうのはどうでしょうか」
「うん?」

 思案をめぐらせている最中に呼ばれたせいか瞬きをして答えてくる生徒会長に、
アッシュブロンドの少女は可笑し味をこらえたような笑顔を向ける。

「お兄さまに変装してもらうんです」
「変装?」
「はい。あの時、皆さんとっても楽しそうでしたから」

 ナナリーの目は見えない。
しかし、だからこそ楽しそうな空気や笑い声は強く印象に残る。
これまでも数々のイベントが行われてきたが、あれは指折りの上位に入る盛り上がり様だった。

「さすがはナナリー、いいところに目をつけたわ」

 無論、それが何のことであるか、当初の発案者であるミレイにわからないはずがない。

「うん、それでいきましょ。ルルーシュ限定の男女逆転祭り。
ユーフェミアさまとルルーシュなら、これ以上ないくらい絵になる二人だし。
反対する理由は一つも見当たらないわ。では、満場一致をもってナナリー案を承認します!」

 元気よく宣言する生徒会長に、ナナリーはぱちぱちと拍手を送った。






『えー、副生徒会長のルルーシュ・ランペルージくん。ただちに私の元へ来なさい』

 善は急げと言わんばかりに、ミレイは早速校内放送を使ってルルーシュを呼び出した。
程なく何ごとかとクラブハウスに現れた黒髪の少年が部屋に入ってくるなり、
満面の笑顔で声をかける。

「よく来てくれたわね、ルルーシュ」
「嫌です」

 だが、ルルーシュは内容を聞く前に断ってきた。
会長の顔を見て、反射的に体が拒否反応を示したのである。

 もちろん、はいそうですかとそれを認めるミレイではない。

「まだ何も言ってないじゃない」
「いえ、お断りいたします」

 重ねての言葉にも、ルルーシュは首を横に振った。
生徒会長がこんな表情をみせている時は、ろくな話があったためしがない。
十中八九、苦痛を伴う何かが待っているに違いなかった。

「ルルーシュ」
「はい」

 ミレイは笑顔のままたおやかに首を傾けて一歩距離を詰め、

「いい? 君は副会長で私は生徒会長。知っているわよね?」
「はあ」

 生返事をする黒髪の少年を下から覗き込むように、

「だったら四の五の言わず、私の言うことを聞きなさい」

 じっと紫水晶の瞳を見つめてぴしゃりと言い切る。

 唇を真一文字に引き結んでいたルルーシュだったが、
この場にやって来た以上逃れられないと観念したのかひょいと肩をすくめて首を縦に振った。

「わかりました」
「うむ、よろしい」

 尊大にうなずきながら、金髪の生徒会長は後輩の肩をぽんと叩くと、
さっと身を翻して部屋の隅に用意してあった洋服掛けを手のひらで指し示す。

「では、今日は一日あの服を着て過ごすこと。いい?」
「この服? ちょっと待ってください会長、これは」

 決して華美ではないものの、丁寧に作りこまれたドレスがそこにはあった。
首元や袖口をあしらう白いレースや胸元を飾るスカーフが何とも愛らしい、
深窓の令嬢ないしは姫君が着てもおかしくない逸品である。

「ええ。男女逆転祭り再びってところね」

 かつて黒髪の少年が袖を通した時のことを思い出したのか、
生徒会長はにこにことしながらたっぷりと相槌を打った。

 そして、おもむろに今回の目的を告げにかかる。

「で、君がお迎えする相手は……」

 たっぷりと間を取ってからミレイが口にした名を耳にしたルルーシュは、
驚愕のあまり目を見開き、遅れて声にならない悲鳴を上げるのだった。






「こんにちは、ナナリー」
「こんにちは、ユフィ姉さま」

 白のドレスに身を包んだ第三皇女を迎えたのは、
アッシュフォードの制服に身を包んだ車椅子の少女だった。

 ユーフェミアはおっとりと小首を傾げ、小ぶりな妹の手を取りたずねる。

「今日私を迎えてくれるのはあなただけかしら?」
「いいえ、もう一人います」

 ナナリーは緩やかにかぶりを振ると、
左後方に身をよじって柱の影に身を潜めている兄へと呼びかけた。

「お兄さま、こちらにいらしてください」
「あ、ああ」

 返事はすぐにあったものの乗り気とは言い難いルルーシュの声を聞いて、
第三皇女はぱっと表情を輝かせる。

「ルルーシュ!」

 だが、姿を現した黒髪の少年を目にした途端、
ユーフェミアはきょとんとした顔でまじまじと見つめてしまった。

「ルルーシュ……?」

 間違いなく、そこに居るのはルルーシュだ。
しかし、どうしてこんな格好をしているのだろう。

「あの、ユフィ。これは」



 女物のドレスを着た黒髪の少年は、笑顔を取り繕おうとして失敗した。

 普段、驚異的な回転を誇る頭脳も、
この時ばかりは錆び付いたかのように機能を停止したままだ。

 前回顔を合わせたゼロの時はまだしも、
今回の女装はまったく予想もつかなかったはずである。
自ら望んでそうした訳ではないものの、一体どう説明したものか。

 一方で、ユーフェミアは思いがけない事態に戸惑っていた。
これは何の冗談だろうか。それとも、

(皇子であることを隠すと言っても、そういう意味じゃないだろうし。
まさか、二重生活のストレスからこういう趣味に走ってしまったとか……!)

 頭を過ぎった考えに衝撃を受けて、第三皇女は思わず口元を覆う。

「あの」

 と、二人の間に流れる雰囲気を読んだのか、
ナナリーは姉のひらひらとした袖をちょいちょいと引いた。

「ユフィ姉さま、ちょっといいですか」
「え? ええ」

 呆気に取られたまま立ち尽くしていたユーフェミアは、あわててうなずき返す。
姉の反応を受けてくつくつと肩を震わせながらも、
アッシュブロンドの少女は目と口元を弓にした。

「私はこの間お話できましたし、しばらくの間お兄さまと二人でお話されますか?」
「え」

 ナナリーの提案に第三皇女は大きく目を見開き、でも、とすぐに我へと返って言葉を続ける。

「でも、ナナリーは」
「私なら大丈夫です。ユフィ姉さまは色々とお忙しいと思いますが、
今度お会いする時にはその分独り占めさせて頂きますので」

 つい先日会ったばかりとはいえ、ナナリーも話をしたい気持ちは変わらないはずである。
それにも関わらず、気遣ってくれているのだ。
ユーフェミアがルルーシュと遠慮なく話ができるようにと、心優しい妹は気遣ってくれている。

「ありがとう、ナナリー」

 ユーフェミアは心からの笑顔で礼を口にすると、
深い感謝の想いを込めてナナリーをそっと抱きしめた。





 ナナリーが退出するのを見届けてから、ユーフェミアは黒髪の少年にほほえみかけた。
二人きりになれたことを喜ぶ気持ちを隠そうとはせず、
それでいてさらりと言いにくいはずの台詞を放つ。

「まず、今日は政治絡みの話はなしにしましょう」
「ああ、わかった」

 ルルーシュは苦笑した。
この少女にはかなわないと、つくづく感じ入ったのである。
おかげで、今だけは行政特区のことも忘れて過ごすことができる。
それはあの頃の二人に戻ることができる、魔法の言葉なのだ。

 思い返してみれば、幼い頃もそうだったのではないか。
利発だったはずの少年は、幾度となくまっすぐな少女の心に翻弄され続けていた。
ルルーシュたち兄弟にとっては決して居心地のよくなかった、
ブリタニア皇族に囲まれた生活の中で彼女の存在は、
光明であったと言っても過言ではなかったのである。

「それにしてもルルーシュ、すごく可愛いわ。
私びっくりしちゃった。一瞬、ナナリーに姉なんていたっけ、とか思ってしまったもの」
「な……っ」

 上目遣いで視線を向けてくるユーフェミアに、ルルーシュは言葉を失った。

「でも、どうしてこんな格好を? 趣味、ではないのでしょう?」

 興味津々といった顔つきで質問をされて、黒髪の少年は我知らず顔を背け気味に言う。

「趣味だ、と答えたらどうする」
「もしそうだったら、もっと堂々としているはずだわ」

 第三皇女は花のような微笑を満面にたたえながら、軽やかな動きでステップを踏んだ。
そう。彼が自らの意思でこの服を着ることを選んだのだとすれば、
胸を張り、誇りに満ちた表情をみせるに違いない。
あるいは、どちらが本物の皇女かわからないくらい、凛とした姿なのではないか。

「何を笑っている?」
「それはそれでアリかな、とか思っちゃったから」

 こみ上げる可笑しさを抑えきれないといった風に、ユーフェミアは細かく肩を震わせた。
それはそれで、ナナリーと二人“お嫁さん”の座を巡って争うことになったのかもしれない。
見惚れてしまうほど格好いいルルーシュ姫は、きっと様になる。

「参ったな」

 ルルーシュはただただ苦笑して、顔の半分を手で覆った。

「これは、会長の命令で」
「命令?」

 淡紅色の髪の皇女は意外な単語にぱちぱちと瞬きをしてから、
思い出したように笑みをこぼして口元を押さえる。

「ふふ、可笑しい。命令されているルルーシュなんて」
「何しろ俺は副会長だからな。この学園では会長命令は絶対なんだ」

 釣られたように瞳を和ませて、ルルーシュはユーフェミアへと向き直った。

「変わらないな、ユフィは」
「あなたもね、ルルーシュ」

 穏やかな眼差しで見つめあううち、自然と頬が緩んでいく。

 と、不意にルルーシュは視線を足元へとやった。

「しかし、この服は足元が妙にすーすーとして落ち着かないな」
「そんなこと、考えたこともなかった。でも、慣れていなかったらそうなのかな?」

 ドレスをほんの少しつまみあげて、ユーフェミアがその場でくるりと一回転する。
それから、ぐっと眉を寄せると黒髪の少年に顔を近づけ耳元でささやいた。

「でもね、冬場は結構つらいのよ。あまり冷えると近くなっちゃうし」
「近く」

 そういうものなのか、とルルーシュが真顔で相槌を打つのを見て、
誇張した表現だったのだろう、ユーフェミアはころころと鈴の鳴るような声で笑う。

 思えばナナリーとは、こうした馬鹿なやり取りをしたことはなかった。
することができなかったというのが正しいのかもしれない。
エリア11に来て以来、くつろいだ気分でいられた時間がどれ程あるだろう。

 それを、目の前にいる少女は二人の間にある垣根など 最初からなかったかのように接することで、
持ち前の天真爛漫な明るさで、心安らぐひと時を容易に生み出すことができるのだ。
彼女と共にいると、悩みを抱えていること自体が阿呆らしく感じられてしまう。

「どうかした?」
「あ、いや」

 顔を覗き込まれて、
なんでもない、と黒髪の少年が答えかけた瞬間、ユーフェミアは軽く両手を打ち合わせた。

「わかったわ、その格好でどうやってお手洗いを済ませればいいのか、わからないんでしょう?」
「は?」

 思わず目を丸くするルルーシュに構わず、第三皇女はにっこりと口元の弧を更に引き絞る。

「安心して、ルルーシュ。私が着いていってあげるから」
「な、何を言っているんだユフィ」

 隠しようもないくらいはっきりと動揺する黒髪の少年に、
ユーフェミアは、経験したことがない何かに挑戦するのをためらっている幼い者に、
うまくいくから大丈夫と言い聞かせるかのような調子で優しくほほえみかけた。

「遠慮なんてしないで? 小さい頃には一緒にお風呂も入ったことがある仲じゃない」
「だからって、トイレの……しかも女子トイレの個室にまで」

 ルルーシュが顔を強張らせたまま無意識のうちに後ずさりする。
何も性別が変わった訳ではないのだから、
着ている服がドレスだからといって女子トイレに行く必要はないのだが、
今の彼には冷静に判断する余裕などなかった。

「でも、一人じゃどうすることもできないんでしょう?」
「それは、そうかもしれないが」

 にこやかな笑顔のままずい、と更に距離を詰めてくるユーフェミアから目を反らしつつ、
ルルーシュが苦しそうに言葉をしぼり出す。

「だからと言って……あっ」

 次の瞬間、慣れないヒールを履いているせいか足がもつれて大きくバランスを崩してしまった。

「危ない!」

 反射的に少年の腕を取りにいったユーフェミアだったが、
多少勢いを殺すことには成功したものの支えきることはできず、
ルルーシュはすとんと尻餅をついてしまう。
その腕をつかんでいた淡紅色の髪の皇女は、
前のめりに転んだところを少年に抱きとめられていた。

「すまない、ユフィ。怪我は?」

 真顔でたずねてくるルルーシュに、
ユーフェミアは幾度か目を瞬かせて、吹き出した。

「ぷ、あはは」
「……ユフィ?」

 腕の中でくつくつと笑い続ける少女に、ルルーシュが困惑しきった顔で呼びかける。
打ち所が悪かったのだろうかという思いが頭を過ぎるものの、
直前に見た瞳が宿していた光は正気のそれであった。

 ややあって可笑しさが収まったのか、
ユーフェミアは少年の膝の上に横座りになって柔らかな表情をみせる。

「大丈夫、怪我はないわ。あなたが受け止めてくれたから」
「それならいいんだが」

 拳二つ分程の近さにある少女の顔を見つめることに気恥ずかしさを覚えて、
ルルーシュはわずかに目を泳がせた。
それならば、彼女はどうして笑ったのだろうか。

「それにしても」

 顔色からルルーシュの内心を読み取ったのか、ユーフェミアは悪戯っぽく目を弓にし、

「ルルーシュったらすぐ冗談を真に受けるんだから。
まさか、トイレの中まで着いてくるなんて本気で思ったの?」
「それは」

 もっともな指摘に、少年の頬に微かながらも朱が差した。
今更ながらに、からかわれていたのだと気づいたのである。

「ねえ、ルルーシュ」
「うん?」

 目線を正面に戻して、ルルーシュは小さく息を飲んだ。
淡紅色の髪の少女の顔は笑ってはいたが、
そこにはからかいや可笑し味は一切含まれてはいない。

 まさに、天使のような、と形容するにふさわしいほほえみだった。

「ずっと、こうしていられたらいいのにね」




 ユーフェミアは静かに目を閉じて、黒髪の少年の肩口に身をもたせかける。

「そうだね」

 ややぎこちなく少女の手を取りながら、
この時間が永遠に続けばいいと、ルルーシュは心底思うのだった。





ver.1.00 08/08/17
ver.1.05 08/08/17
ver.1.30 08/08/18
ver.1.80 08/08/20
ver.3.00 08/08/27

〜男女逆転祭り、再び!舞台裏〜
ル:ルルーシュ C:C.C. ア:アーニャ ナ:ナナリー

C「よく似合っているじゃないか、ルルーシュ」
ナ「本当です。とってもお似合いです、お兄さま」
ア「ルルーシュくん、すごく綺麗」
ル「なっ……」
C「うらやましいぞ、ルルーシュ。私よりもよほど美しいじゃないか。
 どうだ? いっそ、その格好で過ごしてみるというのは」
ル「ば、馬鹿を言うな!」
ア「そうすればいい。きっとモテモテ、毎日手紙が来る」
ナ「ふふ、少し妬けてしまいますね」
ル「アーニャさま、ナナリーまで……いや、待ってくれ。
 俺は好きでこんな格好をしている訳ではないんだ。
 第一、男から手紙をもらっても嬉しくないぞ!」
C「ほう。つまり、女性からの手紙は喜んで受け取るということか?」
ア「ルルーシュくんって、実はむっつり?」
ナ「そうだったんですか? 私、お兄さまがそうだとは知らなかったです」
ル「違う、そうじゃないナナリー! そもそも、どうしてそうなるんだ!」
C「なるほどな。お前も雄だったと言うことか。よくわかったよ」
ア「雄。なんだか響きがイヤらしいと思うのは、私だけ?」
ナ「お兄さまが雄……」
ル「いや、だからそういう意味では」
C「気にすることはないぞ、ルルーシュ。むしろ私は嬉しい。
 お前は年頃の男にしては初心過ぎるからな」
ル「っ」
ア「じゃあ、ルルーシュ姫とのデートは、私が一番乗りで」
ナ「あ、待ってくださいアーニャさん。私が先に」
ア「いくら皇女殿下の頼みでも、聞けることと聞けないことがある。ここは譲らない」
C「よかったな、ルルーシュ。すっかりモテモテじゃないか」
ル「……あのな」
C「ああ、二人が言い争っている隙に私が手をつけるとするか。
 ちょうどいい暇つぶしになる。行くぞ、ルルーシュ」
ル「おい、C.C.! 待て、まさかこのまま外に……っ」

 姫殿下、もとい女装したルルーシュは、
こうして少女たちに散々いじり倒されるのであった。



 という訳でユフィがルル子をたずねたら、でした。
ユフィというお客さんを迎えての男女逆転祭り、いかがでしたでしょうか。
登場メンバーは限られているものの、シリーズとしては生徒会ものですね。
なんだかんだで自他共に認めるお祭り娘ミレイは、
私にとって結構お気に入りキャラなのかもしれません。
使い勝手がいい、というのもあるでしょうけれど。

 ちなみにこの話は上記の通り、
鈴木志亜さん が描かれた男女逆転祭りルルーシュ×ユフィから派生して、
掲示板のやり取りでユフィ×ルル子ネタが盛り上がって生まれたものです。
冒頭部にミレイたちを絡ませてこんな話にしてみましたが、
合作に、とお声をかけてくださった時、飛び上がらんばかりに喜んだ私です。
こうして可憐な挿絵を描いてくださった志亜さんに、心から感謝しています。

 次はR2メンバーで贈る生徒会ものをお届けしたいと思っています。
藤堂×千葉熱が密かに盛り上がりつつはある今日この頃ですが、
本編がますます殺伐としつつある中、
愛らしいC.C.とルルーシュのほのぼのしたやり取りもいいなと考えつつ、
新旧C.C.とカレンの話も書きたいところですね。

 あとはギルフォード追悼のため、何か書いてあげたくもありますが、
同じ描くならコーネリアと絡めたいところですね。
ところで19話を見て扇、色香に迷ったかと思ったのは私だけでしょうか。

 それでは、再び皆さまとお会いできることを祈りながら。
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